2023年2月13日

令和5年度税制改正の解説 -外国子会社合算税制

1. 税制改正の概要

グローバル・ミニマム課税の導入に伴い、主に企業への事務負担軽減の観点から外国子会社合算税制の改正が行われました。

改正点は次のとおりです。

(1)特定外国関係会社に係る租税負担割合の引き下げ

特定外国子会社の租税負担割合について、改正前は、租税負担割合が30%未満の場合に会社単位の合算課税の対象でしたが、改正後は、27%未満に引き下げられました。

(2)部分対象外国関係会社に係る申告書への書類添付義務の緩和

部分対象外国関係会社について、改正前は、すべての部分対象外国関係会社が財務諸表や税務申告書等の書類の添付義務がありましたが、改正後は、次のいずれかに該当する場合には申告書への添付義務が免除され、保存義務に改正されました。

①部分適用対象金額がない部分対象外国関係会社

②部分適用対象金額が2,000万円以下であること等により本税制が適用されない部分対象外国関係会社

(3)外国関係会社の株主等に係る添付書類の簡素化

外国関係会社が申告書に添付する株主等に関する記載事項に係る添付書類について、外国関係会社と株主等との関係を系統的に示した図に代えることができることとされました。

令和5年度外国子会社合算税制の改正の概要

項目改正前改正後
特定外国関係会社に係る租税負担割合租税負担割合が30%未満の場合に会社単位の合算租税負担割合が27%未満の場合に会社単位の合算
部分対象外国関係会社に係る書類添付すべての部分対象外国関係会社に書類添付義務がある部分合算のない部分対象外国関係会社に限り、書類添付が不要となり、保存で足りる
株主等に係る添付書類株主等の氏名・住所等及びその有する株式等の数又は金額を記載した書類出資系統図

2. 適用時期

令和6年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度

3. 実務上の影響及び留意点

租税負担割合の引き下げについては、引き下げの範囲が狭いように思われるかもしれませんが、法定税率が27%~30%であるドイツ、イタリア、韓国、米国のニューヨーク州やカリフォルニア州等といった日本企業が多く進出している国・地域が該当しますので、一定の事務負担が軽減されるものと考えられます。

申告書の添付書類の改正については、添付が不要となったものの、保存が必要となることについては留意する必要があります。

一覧に戻る

フェアコンサルティングのネットワーク

フェアコンサルティンググループとして国内、国外とも多数の拠点をもっております。

  • 国内
  • 国外

メディア・書籍

フェアコンサルティンググループの執筆物をご紹介しております。

  • 図説移転価格税制(Visual TP)

    本書は、移転価格税制の基礎から、独立企業間価格の算定方法、移転価格文書化、税務調査、事前確認制度、相互協議などの実務上の取扱いや留意点について、文章と図解でわかりやすく解説しています。移転価格税制の全体像を掴むのに最適な一冊です。

    定価: 6,600円
    出版社: 税務研究会出版局
    発行: 2022.11.1
    著者: 萩谷 忠 (監修), 伊藤 雄二 (監修), 税理士法人フェアコンサルティング (著)
  • 月刊国際税務2022年9月号

    「国際税務の相談室★金融取引(移転価格税制)」
    タイトル:「新移転価格事務運営要領での金銭消費貸借取引及び債務保証取引の独立企業間価格」

    定価: 年間購読のみ15,000円(税込)
    出版社: 税務研究会
    発行: 2022.9
    著者: 萩谷忠
  • 月刊国際税務2022年1月号

    「国際税務の相談室★移転価格税制」
    タイトル:「東南アジアに所在する国外関連者との取引に係る事前確認(APA)申出は行うべきか」

    定価: 年間購読のみ15,000円(税込)
    出版社: 税務研究会
    発行: 2022.1
    著者: 萩谷忠
  • 国際税務研究会

    「BEPS行動計画対応状況一覧表」
    「BEPS行動計画13対応状況一覧表」

    著者: 細田明(執筆・監修)
  • 月刊国際税務2021年5月号

    「国際税務の相談室★移転価格税制」
    タイトル:「自立した国外関連者との取引に係る独立企業間価格」

    定価: 年間購読のみ15,000円(税込)
    出版社: 税務研究会
    発行: 2021.5
    著者: 萩谷忠
  • 月刊国際税務2020年9月号

    「国際税務の相談室★移転価格税制」
    タイトル:「国際税務の相談室★移転価格税制・・キャプティブ(再)保険取引と移転価格税制」

    定価: 年間購読のみ15,000円(税込)
    出版社: 税務研究会
    発行: 2020.9
    著者: 萩谷忠
  • もう悩まない!現地駐在者直伝! アジア進出企業の税務トラブルQ&A

    アジア諸国進出企業が直面する現地国での特有の税務トラブルを、現地で実際に解決に導いてきた著者らの活きた豊富なノウハウにより解決する実践的解説書。日本企業の進出数が多いアジア 10か国(中国、香港、台湾、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、 インド)について、「国別」に「Q&A」形式でわかりやすく解説する。

    定価: 4,000円(税別)
    出版社: 第一法規株式会社
    発行: 2018.03
    著者: 伊藤雄二、外園雅大
  • Q&A 移転価格 ドキュメンテーション 基礎知識と実務対応

    課税当局の動向、調査の着眼点を踏まえたピントのあった解説。文書化を行う上で必要な基礎知識から、最近のBEPSの動向までをわかりやすい切り口でカバー。

    定価: 3,000円(税別)
    出版社: 税務経理協会
    発行: 2015.10
    著者: 伊藤雄二、十河直彦
  • Q&A 移転価格の税務調査

    移転価格税制の基本知識から調査官の考え方、移転価格調査に対する適切な対応までQ&Aで丁寧に解説。「無形資産をめぐる国外関連取引」の増加に伴う問題点や「広告宣伝費用の負担関係」についての考え方等、現在の重要論点を整理。

    定価: 3,000円(税別)
    出版社: 税務経理協会
    発行: 2014.01
    著者: 伊藤雄二
  • 図説移転価格税制 – Visual TP(全訂第2版)

    移転価格について文字とビジュアルでわかりやすく解説。

    定価: 4,200円(税別)
    出版社: 税務研究会出版局
    発行: 2012.09
    著者: 伊藤雄二、萩谷忠
  • Q&A 移転価格税制のグレーゾーンと実務対応

    現状において最も課税リスクがあるポイントに斬りこむ!実務上の諸問題の中で、重要であるにもかかわらず明確な方向性が示されてこなかったものを取り上げ、独自の見解を示した先駆的解説書。

    定価: 2,800円(税別)
    出版社: 税務経理協会
    発行: 2012.03
    著者: 伊藤雄二、萩谷忠