移転価格文書化規定について
OECD BEPSプロジェクト最終報告書を受け、近年多くの国で移転価格文書化が義務化されました。移転価格文書とは、「マスターファイル: MF、事業概況報告事項」「ローカルファイル: LF、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類」「CbCR: Country by Country Report、国別報告事項」を指し、売上高や関連者間取引額が基準値を超える場合、作成や税務当局への提出が求められますが、各国で基準値が異なるため、日本だけではなく、国外関連者所在国における取り扱いについても把握の上、対応が必要になります。また、同時に、グループとしてのコンプライアンス遵守の観点から、究極の親会社において各国における移転価格文書化の管理が求められるようになりました。
概要
移転価格文書とはMF、LF及びCbCRを指しますが、通常、MFとCbCRは究極の親会社において作成が求めら、日本では、直前会計年度の連結総収入金額1,000億円以上の多国籍企業グループに作成が求められます。しかしながら、究極の親会社にて作成が免除される場合においても、国外関連者所在国で作成が求められることもあるため、各国の規定を把握した対応が求められます。一方、LFは各国で作成が求められており、日本においては一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の取引金額(受払合計)が50億円以上、若しくは当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の無形資産取引金額(受払合計)が3億円以上である場合においては法人税申告期限までの作成が求められます。当該基準を下回る場合においても、税務調査にて提示/提出が求められた場合は、求められたときから60日以内に提出することが求められています。国ごとに基準の設定が異なるため、MF、CbCRと同様、各国の規定を把握した上で対応が求められます。
したがって、経理担当者は、国際税務の基本的な仕組みを理解して、税務調査の対象となった時にも、しっかり対応することができるよう必要な知識を身につけ、準備を進めておく必要があります。
想定される業務
税務ご担当者は、日本における文書化規定を理解の上国外関連者と連携し、以下について対応することが必要になります。
- 国外関連者所在国の移転価格文書化規定に係る最新情報の収集
- 移転価格文書の作成基準、免除基準、作成・提出期限などの把握
- MF、CbCRを子会社経由で提出する場合の作成スケジュールの確認
- ノーティフィケーションの有無の確認
- 作成言語の確認
- 作成済移転価格文書の本社の観点からのレビュー
想定される業務上の注意点
以下は一例ですが、各国の移転価格税制の観点から適正に作成されているかの確認が必要になります。
- どちらかの国に有利な記載、分析となっていないか
- 課税リスクを高めるような記載はないか
- 記載漏れや記載過多がないか
- 作成・提出が期限通り実施されているか
業務をスムーズに進めるための事前対策
本社ご担当者には各国の移転価格税制や移転価格文書化規定の理解が求められますが、各国の最新情報の収集や専門用語の理解は難しものです。税理士法人フェアコンサルティングでは、税務担当者の方々向けに以下のような移転価格文書化に係るアドバイスやディスカッションを随時行っております。日々の業務の中で必要になる知識・情報を移転価格専門家が丁寧にお伝え致しますので、お気軽にご相談ください。
- 各国文書化規定に係る最新情報の提供
- 貴社国外関連者所在国の文書化規定の特徴に係る解説の実施
- グループの移転価格文書化に係るアドバイス・ディスカッションの実施
Naoki Shimokawa
下川 直輝
事業会社の事業部門にて開発・マーケティング・事業管理と幅広く業務を経験した後、管理部門にて移転価格業務に従事。その後、デロイトトーマツ税理士法人にて、事業会社における幅広い業務経験と移転価格実務経験を活かし、多岐に亘る移転価格コンサルティングサービスを提供。2018年2月より3年間Deloitte Singaporeに駐在し、税務面でのシンガポールの日系企業サポートに加え、東南アジア地域における移転価格プロジェクトのサポートを担当。
税理士法人フェアコンサルティング(シンガポール事務所)においては、Regional Director (International Tax)として、主として移転価格アドバイザリーサービスを、シンガポール含め東南アジア地域の日系企業に提供。
フェアコンサルティングのネットワーク
フェアコンサルティンググループとして国内、国外とも多数の拠点をもっております。
- 国内
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メディア・書籍
フェアコンサルティンググループの執筆物をご紹介しております。
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月刊国際税務2024年1月号
定価: 年間購読のみ55,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2024.1 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2023年5月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「研究開発を行っている、特許を保有している、という理由だけで、調査官から超過収益力があると指摘されています」定価: 年間購読料のみ55,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2023.5 著者: 萩谷忠 -
図説移転価格税制(Visual TP)
本書は、移転価格税制の基礎から、独立企業間価格の算定方法、移転価格文書化、税務調査、事前確認制度、相互協議などの実務上の取扱いや留意点について、文章と図解でわかりやすく解説しています。移転価格税制の全体像を掴むのに最適な一冊です。
定価: 6,600円 出版社: 税務研究会出版局 発行: 2022.11.1 著者: 萩谷 忠 (監修), 伊藤 雄二 (監修), 税理士法人フェアコンサルティング (著) -
月刊国際税務2022年9月号
「国際税務の相談室★金融取引(移転価格税制)」
タイトル:「新移転価格事務運営要領での金銭消費貸借取引及び債務保証取引の独立企業間価格」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2022.9 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2022年1月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「東南アジアに所在する国外関連者との取引に係る事前確認(APA)申出は行うべきか」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2022.1 著者: 萩谷忠 -
国際税務研究会
「BEPS行動計画対応状況一覧表」
「BEPS行動計画13対応状況一覧表」著者: 細田明(執筆・監修) -
月刊国際税務2021年5月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「自立した国外関連者との取引に係る独立企業間価格」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2021.5 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2020年9月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「国際税務の相談室★移転価格税制・・キャプティブ(再)保険取引と移転価格税制」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2020.9 著者: 萩谷忠 -
もう悩まない!現地駐在者直伝! アジア進出企業の税務トラブルQ&A
アジア諸国進出企業が直面する現地国での特有の税務トラブルを、現地で実際に解決に導いてきた著者らの活きた豊富なノウハウにより解決する実践的解説書。日本企業の進出数が多いアジア 10か国(中国、香港、台湾、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、 インド)について、「国別」に「Q&A」形式でわかりやすく解説する。
定価: 4,000円(税別) 出版社: 第一法規株式会社 発行: 2018.03 著者: 伊藤雄二、外園雅大 -
Q&A 移転価格 ドキュメンテーション 基礎知識と実務対応
課税当局の動向、調査の着眼点を踏まえたピントのあった解説。文書化を行う上で必要な基礎知識から、最近のBEPSの動向までをわかりやすい切り口でカバー。
定価: 3,000円(税別) 出版社: 税務経理協会 発行: 2015.10 著者: 伊藤雄二、十河直彦 -
Q&A 移転価格の税務調査
移転価格税制の基本知識から調査官の考え方、移転価格調査に対する適切な対応までQ&Aで丁寧に解説。「無形資産をめぐる国外関連取引」の増加に伴う問題点や「広告宣伝費用の負担関係」についての考え方等、現在の重要論点を整理。
定価: 3,000円(税別) 出版社: 税務経理協会 発行: 2014.01 著者: 伊藤雄二 -
図説移転価格税制 – Visual TP(全訂第2版)
移転価格について文字とビジュアルでわかりやすく解説。
定価: 4,200円(税別) 出版社: 税務研究会出版局 発行: 2012.09 著者: 伊藤雄二、萩谷忠 -
Q&A 移転価格税制のグレーゾーンと実務対応
現状において最も課税リスクがあるポイントに斬りこむ!実務上の諸問題の中で、重要であるにもかかわらず明確な方向性が示されてこなかったものを取り上げ、独自の見解を示した先駆的解説書。
定価: 2,800円(税別) 出版社: 税務経理協会 発行: 2012.03 著者: 伊藤雄二、萩谷忠
ニュース・トピックス
税理士法人フェアコンサルティングのニュース・トピックス情報
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2024年4月26日
2024/3/27 日本税理士会連合会主催 「令和5年度全国統一研修会 国際取引に関する税務調査について~寄附金と移転価格~」についてマルチメディア研修を行いました。
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2023年6月2日
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2023年6月2日
2022/7/22 札幌国税局職員、札幌市内税務署職員向けに、「非居住者及び外国法人の不動産取引に係る課税問題等」について研修を行いました。
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2023年6月2日
2022/3/7 ~ 4/6 福岡国税局職員向けに、「外国子会社合算税制の適用除外基準、移転価格税制の基本」についてWebinarを開催しました。
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2023年2月13日
「国際税務の相談室★金融取引(移転価格税制)」
タイトル:「独立企業間価格の算定に、金融ツールを用いることができるのか」