地域統括会社の論点と移転価格対応
地域統括会社(Regional Headquarters, RHQ)は、多国籍企業グループにおいて、特定地域の事業活動を一元的に管理・統括する重要な役割を担い、
アジア・欧州・北米といった地域ごとに事業戦略を策定し、グループ会社間のシナジー効果を高めるために活用されています。
具体的には、以下の業務を通じて、グループ全体の効率性と収益性の向上に貢献しています。
■ 事業戦略の立案・実行:各子会社の事業計画を監督し、地域の市場動向に合わせた戦略を策定
■ 経営管理・財務管理:グループ全体の資金効率を高めるための資金管理や、財務状況のモニタリングを実施
■ グループ内役務提供:IT、人事、法務、経理財務、マーケティングといったサービスを各子会社に提供
■ 無形資産の開発・ライセンス:研究開発部門による技術開発活動から生み出される無形資産の管理やグループ会社への供与を実施
移転価格税制上の主な論点
地域統括会社は、上記の役割を果たす上で、グループ会社との取引が発生することになるため、独立企業原則に基づいた適正な対価が設定されていない場合、
地域統括会社所在国、もしくはグループ会社所在国において移転価格税制上のリスクを抱えることになります。
主な論点は以下の通りです。
• 経営管理サービス:グループ会社への経営指導や管理業務
• マーケティングサポート:グループ会社の広告宣伝活動支援
サービスの提供においては、有償性があるか、対価が適正に設定されているか(提供する側のコストが適切に計算されているか)、また、実際に提供されたことを証明するエビデンスが整備されているかが主な論点となります。
■ 無形資産ライセンス取引:
• 研究開発:技術・ノウハウ等の無形資産ライセンス
無形資産ライセンス取引は、地域統括会社が開発した技術・ノウハウ等の無形資産ライセンス対価としてのロイヤルティが、無形資産の開発・改良・維持・保護・使用に係る活動に基づき適切に設定されているかが主な論点となります。
■ 金融取引:
• グループ内ローン/キャッシュプーリング:地域統括会社からグループ会社へのローン。
もしくは、キャッシュプーリングによる地域統括会社からグループ会社へのローンやグループ会社から地域統括会社へのローン
ローン金利については、借手となる会社の信用力に基づく設定となっているかが主な論点となります。また、キャッシュプーリングにおいては、プーリングベネフィット(外部借入が減少したことによるグループとしての支払利息の削減効果等)の配分の合理性も論点になります。
■ その他:
• 地域統括会社がグループ間取引の商流に介在し、リインボイスを行う場合、リインボイス機能に係る適切な利益の獲得が必要になります。
その利益の指標として、売上高営業利益率が適切ではない場合があります。
• 地域統括会社が、物流、調達、販売の統括・管理機能なども併設する場合、当該機能に係る適切な利益の獲得が必要になります。
こんなお困りごとはございませんか?
• 地域統括会社を設立予定だが、機能や取引設計に悩んでいる
• 地域統括会社を設立したが、役割がはっきりしておらず、上手く利益を落とせる仕組みができていない
• 地域統括会社が子会社への経営指導を実施する予定だが、対価の回収可否の検討や対価算定が実施できていない
• 地域統括会社にて研究開発をスタートさせる予定だが、無形資産の管理やライセンスに係る検討が実施できていない
• 地域統括会社に金融統括機能を持たせる予定だが、仕組みや金利設定ができていない
• 既存の商流に地域統括会社を介在させたいが、どのくらいの利益が得られるか、機能設計をしつつ検討したい
• 地域統括会社に調達に係る統括機能を持たせたいが、どのくらいの利益が得られるか知りたい
移転価格税制への具体的な対応策
上記の論点に対応するためには、設立前の取引設計及び各取引の独立企業間価格算定が必要となります。
具体的な対応策は以下の通りです。
• 有償性判定:提供するサービスが、独立企業間の取引に照らし、対価を支払うべきサービスであるかを判断します。
• 対価算定:サービス提供にかかったコストに一定のマークアップ(ベンチマーク分析に基づく)を上乗せし、役務提供対価を設定します。
• エビデンスの整備:サービスの提供の実態を示すエビデンスを整備し、対価支払国側の税務調査において役務提供が実際に提供されたことを示せるよう準備します。
■ 無形資産取引(ロイヤルティ)>>
• 無形資産取引に係るDEMPE分析:無形資産取引における開発・改良・維持・保護・使用に係る機能を分析します。
• 無形資産ライセンス内容・期間:どの無形資産をどのくらいの期間ライセンスするか、どのグループ会社によって利用されるのかを特定します。
• ロイヤルティ料率の検討:マーケットアプローチ、コストアプローチ、もしくはインカムアプローチを用いたロイヤルティ料率の算定を実施します。
■ 金融取引>>
• 格付評価と利率算定:借手の信用力(格付け)を評価し、当該評価結果に基づくスプレッドとリスクフリーレートを用いた金利算定を実施します。
• 債務保証料率算定:イールドアプローチ、もしくはコストアプローチを用いた債務保証料率の算定を実施します。
• プーリングベネフィットの配分:移転価格税制上合理的と考えられる配分基準を決定します。
■ その他:
• 適正利益率算定:リインボイス機能及びリスクに見合う利益率を、ベンチマーク分析を実施し算定します。
• 機能設計・適正利益率算定:物流、調達、販売の統括機能なども併設する場合において、機能設計を実施し、当該機能及びリスクに見合う利益率を、ベンチマーク分析を実施し算定します。
一方、地域統括会社が当該ビジネスの主導的役割を果たす場合においては、関連者の機能・リスクに見合う利益率を、ベンチマーク分析を実施し算定します。
Naoki Shimokawa
下川 直輝
事業会社の事業部門にて開発・マーケティング・事業管理と幅広く業務を経験した後、管理部門にて移転価格業務に従事。その後、デロイトトーマツ税理士法人にて、事業会社における幅広い業務経験と移転価格実務経験を活かし、多岐に亘る移転価格コンサルティングサービスを提供。2018年2月より3年間Deloitte Singaporeに駐在し、税務面でのシンガポールの日系企業サポートに加え、東南アジア地域における移転価格プロジェクトのサポートを担当。
税理士法人フェアコンサルティング(シンガポール事務所)においては、Regional Director (International Tax)として、主として移転価格アドバイザリーサービスを、シンガポール含め東南アジア地域の日系企業に提供。
フェアコンサルティングのネットワーク
フェアコンサルティンググループとして国内、国外とも多数の拠点をもっております。
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メディア・書籍
フェアコンサルティンググループの執筆物をご紹介しております。
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税務行政のDXが変える日本の未来
定価: 3,300円(税込) 出版社: 金融財政事情研究会 発行: 2024/9/30 -
月刊国際税務2024年1月号
「国際税務の相談室★金融取引(移転価格税制)」
タイトル:「独立企業間価格の算定に、金融ツールを用いることができるのか」定価: 年間購読のみ55,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2024.1 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2023年5月号
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タイトル:「研究開発を行っている、特許を保有している、という理由だけで、調査官から超過収益力があると指摘されています」定価: 年間購読料のみ55,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2023.5 著者: 萩谷忠 -
図説移転価格税制(Visual TP)
本書は、移転価格税制の基礎から、独立企業間価格の算定方法、移転価格文書化、税務調査、事前確認制度、相互協議などの実務上の取扱いや留意点について、文章と図解でわかりやすく解説しています。移転価格税制の全体像を掴むのに最適な一冊です。
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月刊国際税務2022年9月号
「国際税務の相談室★金融取引(移転価格税制)」
タイトル:「新移転価格事務運営要領での金銭消費貸借取引及び債務保証取引の独立企業間価格」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2022.9 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2022年1月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「東南アジアに所在する国外関連者との取引に係る事前確認(APA)申出は行うべきか」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2022.1 著者: 萩谷忠 -
国際税務研究会
「BEPS行動計画対応状況一覧表」
「BEPS行動計画13対応状況一覧表」著者: 細田明(執筆・監修) -
月刊国際税務2021年5月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「自立した国外関連者との取引に係る独立企業間価格」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2021.5 著者: 萩谷忠 -
月刊国際税務2020年9月号
「国際税務の相談室★移転価格税制」
タイトル:「国際税務の相談室★移転価格税制・・キャプティブ(再)保険取引と移転価格税制」定価: 年間購読のみ15,000円(税込) 出版社: 税務研究会 発行: 2020.9 著者: 萩谷忠 -
もう悩まない!現地駐在者直伝! アジア進出企業の税務トラブルQ&A
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Q&A 移転価格 ドキュメンテーション 基礎知識と実務対応
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Q&A 移転価格の税務調査
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定価: 3,000円(税別) 出版社: 税務経理協会 発行: 2014.01 著者: 伊藤雄二 -
図説移転価格税制 – Visual TP(全訂第2版)
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定価: 4,200円(税別) 出版社: 税務研究会出版局 発行: 2012.09 著者: 伊藤雄二、萩谷忠 -
Q&A 移転価格税制のグレーゾーンと実務対応
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定価: 2,800円(税別) 出版社: 税務経理協会 発行: 2012.03 著者: 伊藤雄二、萩谷忠
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